桜の花びらが、風に舞い散る様はたいそう風情があり美しいのですが、同時に一抹の寂しさ、哀れさを感じてしまいますね。
日中の温かさに比べ、まだまだ朝晩が冷え込むこの寒暖差はどうでしょう。体調を崩されている方も少なからずおられるのではないでしょうか。
本日は、《平成》から《令和》へ元号が移り変わるこの時期に、その昔、福山藩で活躍した御用絵師「藤井松林」先生の素晴らしい作品をお目にかけたいと思います。
【碧譚游鯉図(へきたんゆうりず)】藤井松林・画 明治26年
「藤井松林」先生は、福山藩で”御用絵師”として仕事にあたり、〈海防測量絵図画〉や、ぺリ-来航時には江戸湾に浮かぶ黒船を写し、征長の役にも従軍して〈地形絵図〉などを描いています。
明治以後の近代・福山画壇に大きな足跡を残した「藤井松林」先生は、明治10年、第1回内国勧業博覧会に、「藤花雀、栗鼠図」を出品し、さらに宮中に献上され、~懐紙、煙草入れ、水注~の三品を下賜されて、地方画家としては破格の栄誉を受けられました。画家としての名声も大いに上がり、弟子入りして画を習うものも多数でてきたようです。
晩年、尾道、浄土寺(広島県尾道市)の作品群は、松林68歳の冬から浄土寺に宿泊し、⒉年の歳月をかけての労作で、~松林、画業の集大成~とみるべき最高の作品群だと思います。
そして、70歳の逸品に、この【碧譚游鯉図(へきたんゆうりず)】があります。この作品は、明治26年、癸巳(みずのと み)七十翁 松林寫(写)と落款しています。これぞまさしく「藤井松林」の技量だと見せつけるような出来栄えの素晴らしい作品ではないでしょうか。